海洋ごみから考える リサイクルと仕事について
春の気配を感じるようになったと思ったら、沖縄では早くも海開きが始まったとのこと。今さらながら、3月における季節感のギャップに軽く驚いてしまいます。こんなニュースを見ると出かけたくなりますし、キレイな海は眺めるだけでも爽快な気分になれますね。
さて突然ですが、海といえば「ゴーストフィッシング」という言葉を知っていますか。
紛失、投棄などで海に残ってしまった釣り具や漁具が、図らずも海の生き物に危害を与えてしまっている現象をいいます。釣り具や漁具はプラスチックや鉛を使ったものが多く、海の中でずっと残ってしまうため、例えば漁網に絡まって動けなくなり餓死してしまうなど、長期に渡って危害を与えるものになってしまうとか。
いまや世界共通の重要な課題となっている海洋ごみ。2016年のダボス会議で「2050年の海は魚よりもごみの量が多くなるかもしれない」との予測が発表されたことを知ったときも少なからず衝撃を受けました。さらにごみの一つひとつが今後どのような影響をもたらしていくかを具体的に知ると、一層恐ろしさを感じてしまいます。
春の海は堤防でのルアー(擬似餌)釣りが盛んになる時期です。ただし、人気の一方で根掛かり(障害物に仕掛けや針などが引っかかること)などが原因で、ルアーや釣り糸などを海に落としてしまい、海洋ごみ化する問題も発生しています。そこで最近気になったのが、海底に眠ったルアーや釣り針を回収して、再利用する仕組みをビジネス化するという内容の記事です。ルアー拾いを始めてから2年間で約5000個を拾ったというから、その数に驚きです。
扱うものは違っても、ビジネスのモデルは社会や家庭などに眠る金属資源のリサイクルを中心にした当グループの事業にもつながります。ひと昔前であれば「ごみ」「スクラップ」という言葉にネガティブなイメージを抱く人が大半で、「ごみ拾い」は人の善意を頼りにした社会奉仕的なイメージを持つ人も多かったのではないでしょうか。
サステナブルな社会を世界が目指すようになった今、ものづくりにおいても環境に配慮した製品が求められるようになっています。そこに大事なのは気づきであったり、一人ひとりの意識であったりと様々な要素がありますが、加えて経済と結びつけて「続けていける仕組み」を作ることも非常に大事なのではないでしょうか。
3月に入り、就職活動が本格的に始まっています。
当グループでも会社見学で各社へ学生さんたちを案内したり、説明会を開いたりする機会が増えています。その中でグループ会社の社長から学生さんたちへ向けたあるメッセージがとても印象に残っています。
「リサイクルは縁の下の力持ち。リサイクルの仕事とは、“嫌がられることを率先してできる” こと」
ごみやスクラップがゼロの社会。もちろん、それが最も理想的です。ただし、ものを作り、社会活動が行われれば、ごみやスクラップがどうしても出てしまうのが現実です。だから、それをいかにうまく生かしていくことができるかが重要になる。
リサイクルの仕事は、豊かで幸せなこれからの社会でますます欠かせないものになっていくのだと考えています。
出典:「静岡きらり人財 海の掃除屋、釣り具リメーク」日本経済新聞 電子版.2022-03-11
「廃棄物による海洋汚染 ゴーストフィッシング問題 国連でも対策の動き」TSURINEWS. 2021-11-20(参照2022-03-15)