コロナ禍に増す危機意識
レアメタル備蓄を知る
新型コロナの問題から約3ヶ月。生活や仕事も一変してしまったこの状況に、とにかく早い収束を願うばかりです。
さて、このような非常時になると高まるのが備蓄の必要性。マスク不足や外出自粛に備えたスーパーの行列など、予期せぬ出来事の中で見る様々な光景に、日頃から備えておくことの大切さを改めて感じた方も多いのではないでしょうか。そんな「備蓄」というワードに敏感になっていた中で目にしたのが「政府がレアメタルの備蓄強化へ」という話題。そこで今回はレアメタルの備蓄について改めて調べてみました。
日本は世界で有数の金属消費大国です。EV(電気自動車)、AI、IoTなど、ハイテク産業の大きな成長が予想される今後、金属資源の需要は着実に高まっていくでしょう。中でもハイテク製品に欠かせない素材といえばレアメタルですが、そもそもそのレアメタルを確保するための備蓄制度があるということをどれくらいの方が知っているでしょうか。
資源エネルギー庁のウェブサイトを見てみると、レアメタル備蓄は、国と民間(企業)で協力して行われていることがわかります。始まったのは1983年。きっかけは、1970〜1980年代に起きた2度のオイルショックの経験です。原油価格の高騰により、世界経済に混乱をもたらしたオイルショック。輸入に頼っていた日本も「石油を輸入できなくなるのでは?」と大きな不安に包まれ、トイレットペーパーの買い占めをはじめ、社会に大きな混乱を引き起こしました。
レアメタルも日本はほとんどを輸入に頼っています。また、産出国が偏っていたり、紛争鉱物として政治リスクが絡んだりすることもあり、調達の不安が少なからずつきまとう資源といえます。万一輸入できなくなれば、産業界に大きなダメージをもたらすのは必至。だから、どんなときでも安定供給できるよう備蓄が必要なのです。
さて、国による備蓄を管理するのは、独立行政法人石油天然ガス・金属資源機構(JOGMEC)という機関。調べてみると、備蓄倉庫は茨城県高萩市にあることがわかりました。倉庫面積は野球場3面分(約37,000㎡)あり、かなりの広さです。
備蓄の対象はバナジウム、クロム、ニッケル、タングステン、コバルトなど34鉱種。備蓄量はこれまで一律で国内基本消費量の60日分(国家備蓄42日分、民間備蓄18日分)を目標としていましたが、2020年3月末に発表された新国際資源戦略にて見直しがあり、種類によって180日分程度に延ばすことが決まっています。これが先述したニュースの内容です。どうやら国の関わり方もこれまでより強くなっていく様子。レアメタルの調達において日本は30年以上前から国家の戦略としてリスクに備え、今回の新型コロナによりその危機意識を高めているんですね。
レアメタル確保のため、備蓄のほかにも様々な取り組みが行われています。その一つがリサイクルです。「みんなのメダルプロジェクト」で「都市鉱山」という言葉がメジャーになりましたが、社会で大量に発生する電子機器の廃棄物には、多くのレアメタルが眠っていることがわかっています。これをいかに取り出し、資源として効率的に再生できるか。川島グループでも技術の開発に取り組み、レアメタルのリサイクルを行っています。
資源小国と言われる日本。様々な戦略で資源事情の明るい未来を目指して奮闘しています。