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コラム/技術

水平リサイクルの取り組み
そのメリットは⁉︎

私たちの身の回りには様々な製品があり、様々な資源が使われています。中でもプラスチックは、私たちにとって非常に身近な素材。そのプラスチックを使った容器包装の代表格といえば、ペットボトルです。

軽くて持ち運びやすいペットボトル。おでかけ、レジャー、スポーツのときなど、ふだんの生活でペットボトルにお世話になっている場面は多くあると思います。そのペットボトル、日本では1977(昭和52)年にしょうゆメーカーが容器として採用したのが始まりです。清涼飲料用の容器に用いられるようになったのは1982(昭和57)年で、当時はペットボトル飲料といえば1Lサイズだったことを記憶しています。500mlが販売されるようになったのは1996(平成8)年。いまではペットボトル需要の9割近くが清涼飲料用です(PETボトルリサイクル推進協議会『ボトル用樹脂需要動向』参照)。

ちなみに缶飲料は1954(昭和29)年に製造販売されたオレンジジュースが始まりです。素材はスチール製で現在のようにフタはなく、専用の缶切りで対角線上に2つの穴を開けて飲む形だったとのこと。そういえば昭和の終わり頃までは缶飲料のフタは本体から離れるプルトップ式でした。気づけばプルトップ式のフタを見なくなり、本体から離れないフタが主流に。こちらは「ステイオンタブ」と言うそうです。改めて歴史をみると飲料容器も非常に進化しているんですね。

さて、今回気になったのは、ペットボトル関連のニュースで見かけた「水平リサイクル」というワード。どうやら企業や自治体が協働して「ボトルtoボトルの水平リサイクルに取り組む」といった活動が増えているようです。

では、水平リサイクルとは、どんなリサイクルを言うのでしょうか。

水平リサイクルとは、リサイクルする前と後で用途を変えないリサイクル方法のこと。「ボトルtoボトル」はペットボトルの水平リサイクルを示し、使用済みのペットボトルから新しいペットボトルを作ることを言います。

水平リサイクルは地球に優しいリサイクル

資源を繰り返し使う水平リサイクルでは、天然資源を採掘した新たな原料を用いなくても同じ品質の製品が製造でき、二酸化炭素の排出量を抑えることができます。また、ごみ量の削減につながることもメリットとして挙げられています。

リサイクルと一口にいっても種類があり、大きく「マテリアルリサイクル」「サーマルリサイクル」「ケミカルリサイクル」の3つに分けられます。『日経エコロジー厳選 環境キーワード辞典』によると、マテリアルリサイクルは「使用済み製品や工場で発生する端材などを回収して、新しい製品の材料として利用するリサイクル手法のこと」。サーマルリサイクルは「廃棄物を燃やしたときの排熱を回収して蒸気や温水を作り、発電や給湯などに利用するリサイクル手法」。ケミカルリサイクルは「廃プラスチックを化学分解して原料に戻し、製品に再生すること」とあります。

ペットボトルの水平リサイクル(ボトルtoボトル)は、マテリアルリサイクルの一手法であるメカニカルリサイクルと、上記に挙げたケミカルリサイクルの2方法が当てはまります。メカニカルリサイクルは「回収された使用済みPETボトルを選別、粉砕、洗浄して表面の汚れ、異物を十分に取り除いた後に高温下にさらして、樹脂内部に詰まっている汚染物質を拡散させ、除染を行うこと」(PETボトルリサイクル推進協議会サイトより引用)です。

『PETボトルリサイクル年次報告2022』によると、国内指定ペットボトルの販売量に対してリサイクル率は86.0%(2021年度)。これは欧州(42.7%)や米国(19.6%)に比べてはるかに高く、世界トップレベルにあるそうです。ただし、ボトルtoボトルの比率はそのうちの20.3%にとどまっています。ペットボトルの分別化は進んでいるのに、意外に少ないと感じた方もいるのではないでしょうか。

水平リサイクルは高度な処理が必要となり、リサイクルにコストや手間がかかります。また、異物混入なども課題としてあり、これまではカスケードリサイクル(回収したペットボトルを細かく砕いた再生フレークを原料にして、ペットボトルとは異なる用途のいろいろな製品をつくる方法)が主流でした。同じ品質にリサイクルするということは難しいことなんですね。

ただし、地球環境問題の深刻化は待ったなし。そうした中でもちろん技術の進化もありますが、飲料メーカーをはじめ各方面が少しでも地球に優しいリサイクルを目指し、努力を重ねていることをこの取り組みから感じます。

資源循環への意識を高めることが大切

私たちができることといえば、やはり分別に協力しリサイクルしやすい環境を作ることです。家庭での資源ごみのルールを守ることはもちろん、例えば当コラム「資源をごみにしないために! 令和時代のリサイクル心得」の中でも取り上げたように、自販機横に置かれたボックスなどもごみ箱ではなくリサイクルボックスと認識し、資源循環への意識を高めることが大切です。

水平リサイクルはペットボトルだけではなく、紙おむつや日用品、タイヤなど様々な分野で進められています。川島グループでもアルミ合金事業では使用済みアルミサッシを高度選別して再資源化する「サッシtoサッシ」、アルミホイール事業では「ホイールtoホイール」といった水平リサイクルの一翼を担う技術を確立しています。進化を続けるリサイクルの技術。水平リサイクルのこれからの広がりに注目です。

引用:日経エコロジー編著『日経エコロジー厳選 環境キーワード事典』日経BP社,2014,p113-115
PETボトルリサイクル推進協議会『2.メカニカルリサイクル|ボトルtoボトル|もっと詳しく知る
PETボトルリサイクル推進協議会『カスケードリサイクル|リサイクル製品|基礎知識
参照:PETボトルリサイクル推進協議会『ペットボトルリサイクル年次報告書2022』(参照:2023-06-30)
PETボトルリサイクル推進協議会『ペットボトル用樹脂需要動向』(参照:2023-06-30)
PETボトルリサイクル推進協議会『早わかりPETボトルリサイクル|基礎知識』(参照:2023-06-30)
万代とサントリーが協働し「ボトルtoボトル」水平リサイクルを「リサイクルの日」6月9日より開始』食品産業新聞社ニュースWEB,2023-06-09(参照:2023-06-16)
東京都墨田区、回収PET全量をボトルtoボトルへ ケミカルリサイクルで再生しアサヒ飲料のPET飲料に再利用 連携協定締結』食品新聞,2023-06-13(参照:2023-06-16)
ボトルtoボトル100%へ! 伊藤園などが東急歌舞伎町タワーで水平リサイクル目指す』OVO,2023-04-17(参照:2023-06-16)
一般社団法人 全国清涼飲料連合会『豆知識(甘味料・歴史などについて)|清涼飲料水Q&A』(参照:2023-06-30)
スチール缶リサイクル協会『スチール缶の歴史』(参照:2023-06-30)
東洋製罐グループ 容器を学ぼう『缶のふたの歴史』(参照:2023-06-30)

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